「手壊し解体」を知っていますか?
手壊し解体と聞くと、建物を全部人力で壊す仕事と思えるかもしれません。
実際はもう少し違って、重機で壊す前に内側のものを順番に外し、素材ごとに分けるための大事な工程です。
解体の仕事全体を知る入口として、この言葉を押さえておくと現場の見え方がかなり変わります。
目次
1. 本記事のポイント
- 手壊し解体は、重機解体の前に建築設備や内装材などを手作業で取り外す工程として理解すると分かりやすいです。
- 目的は、分別しやすくすること、安全に後工程へつなぐこと、近隣への影響を抑えやすくすることです。
- 一定規模以上の工事では、建設リサイクル法に基づく分別解体等と再資源化等が求められます。
- 解体・改修工事では、規模の大小にかかわらずアスベストの事前調査が必要です。
- 向いているのは、力任せより、順番を守れる人、細かい分別を嫌がらない人、危険時に声を掛けられる人です。
2. 手壊し解体とは、解体工事の最初に行う手作業の工程
解体工事は、最初から重機で「ガシャーン」と壊し始めるのではありません。
重機を入れる前に、まず手作業で解体する作業があるのです。
これは、実際に解体工事の現場の方に話を聞いて初めて知ったことで、編集メンバーもほとんど知りませんでした。
国土交通省の官庁営繕向け共通仕様書では、建築物の解体は以下の順で進めるよう示されています。
- 建築設備及び内装材の取外し
- 屋根葺材等の取外し
- 外装材の取壊し
- 躯体の取壊し
- 基礎及び杭の取壊し
建築設備・内装材・屋根葺材等の取外しは、原則として手作業です。
つまり手壊し解体は、建物全部を最初から最後まで人力で壊す意味ではありません。
重機解体の前に行う、整理と分別の工程と考えると理解しやすいでしょう。
3. 重機解体と手壊し解体の違いは、「どこまで手で外すか」
建物の解体は、全部を重機で壊すか、全部を人の手で壊すかの二択ではありません。
最初から全部重機で壊すのかな?
と思いがちですが、そうではないのですね。
実際の現場では、最初に設備や内装材、屋根材などを手作業で取り外し、その後に外装材、躯体、基礎へ進むにつれて機械を使う場面が増えていきます。
つまり、ここでいう手壊し解体は、建物を最初から最後まで全部人力で壊す、というわけではありません。
むしろ、配管やダクト、機器類、木材、建具、せっこうボード、ALCパネル、軽量鉄骨下地、屋根材などを先に外して、材質ごとに分ける工程として捉えるほうが現場の実態に近いです。
前半の取外しは手作業が原則とされています。
手でできる解体が終わったら、重機解体に移行します。
一般に重機解体と呼ばれる場面は、圧砕機やブレーカーで躯体を壊す「破砕解体」に近いイメージです。
豪快なイメージが先行しますが、実際には重機解体も繊細な作業が多々あります。
解体では、重機の重量や振動、衝撃に対して床や梁、地盤の安全を確保することまで求められており、ただ早く壊すのではなく、安全計画とセットで進めることになっているのです。
このため、「重機のほうが安い」「手壊しのほうが安全」と単純に言い切るのは避けたほうがいいでしょう。
「全部手壊し」か「全部重機」かで分かれるより、手作業で外す工程と、機械で壊す工程をどう組み合わせるかで決まります。
4. なぜ手壊しから始めるのか?3つの理由
「手壊し解体から始めるんだよ」
こう聞くと、ちょっと疑問が浮かぶかもしれません。
「最初から重機を入れたほうが効率が良いのでは?」
編集部もそのように思いました。
手作業は時間がかかりますし、なんだか非効率に思えてきます。
なぜ、手壊しの工程が入るのか、もう少し突っ込んで聞いてみると、大きく3つの理由がありました。
分別と再資源化のため
2026年3月時点、環境省の建設リサイクル法の概要では、一定規模以上の対象工事で分別解体等と再資源化等が義務付けられています。
建築物の解体工事は床面積80平方メートル以上、建築物以外の工作物の解体工事は請負代金500万円以上が基準です。
だから、先に手で外して材料を分ける工程は、ただ遠回りをしているのではありません。
法令に沿って後工程を進めるための段取りでもあります。
国土交通省の官庁営繕向け共通仕様書でも、内装材は木材、建具、せっこうボード、ALCパネル、軽量鉄骨下地など、種類ごとに分別解体する考え方が示されています。
ここを雑に混ぜてしまうと、その後の処理も進めにくくなります。
手壊し解体の価値は、早く壊すことより、きれいに分けることにあります。
安全と近隣配慮をしやすくするため
国土交通省の仕様書は、解体工事で騒音、振動、粉じん、臭気などの影響が生じないよう、周辺の環境保全に努めることを示しています。
あわせて、防音パネル・防音シート・養生シートの設置や、粉じんが発生する可能性がある場所への散水も挙げています。
さらに、国土交通省のガイドラインでは、解体対象建築物の構造等を事前に調査し、事故防止に十分配慮した解体工法の選択と施工計画の作成が必要だとされています。
このため、狭い場所や周囲との距離が近い現場ほど、先に手作業で外していく意味は大きいと考えられます。
引用元:建築物の解体工事における外壁の崩落等による公衆災害防止対策に関するガイドラインについて
アスベストなどの確認が欠かせないため
2026年3月時点、厚生労働省の石綿総合情報ポータルでは、解体・改修工事では規模の大小にかかわらず、工事前に解体・改修部分の全ての材料について石綿含有の有無の事前調査が必要とされています。
建築物は2023年10月着工分から、工作物は2026年1月着工分から、資格者による事前調査が必要です。
手壊し解体は、何が使われているかを確かめながら進める現場と切り離せない工程だといえます。
5. 手壊し解体をすることで危険なものを分け、安全性を確保できる
手壊しで触るのは、建物の内側や付属部分が中心です。
ここでは壊すことより、素材を混ぜないことのほうが重要になります。
つまり、大雑把に破壊してしまうと、混ぜてはいけない素材まで一緒になってしまうので、手壊しによって分けることで安全に解体作業を進められるようになるのです。
- 建築設備:配管、ダクト、機器類、衛生陶器類など。
- 内装材:木材、建具、せっこうボード、ALCパネル、軽量鉄骨下地など。
- 屋根葺材等:長尺金属板、瓦、屋根下地など。
こういうことから、解体の現場で評価されやすいのは、力任せに早く壊せる人ではありません。
順番を守って丁寧に分けられる人なのです。
「きちんと分別できる人のほうが頼りにされる」と解体業の方が話をされていました。
6. 手壊し解体はきつい?未経験でも理解しやすい?
体を使うので、楽な仕事とは言えません。
ただ、求められるのは腕力だけではなく、手順を守ること、分別を面倒がらないこと、周囲と声を掛け合えることです。
以前書いた解体工事全体の解説記事でも、解体は勢いよく壊すより、順番に取り外していく工程の積み重ねとして紹介しました。
未経験者にとっては、解体工事の全体像を理解する入口として重機解体と手壊し解体を知っておくとわかりやすいと思います。
相性がいいのは、段取りを守れる人、細かい分別を嫌がらない人、危ない場面で黙らず声を掛けられる人です。
手壊し解体は、解体現場の中でも丁寧さがそのまま仕事の質に出やすい工程だからです。
7. まとめ
手壊し解体は、ただ人力で壊す作業ではありません。
分別しやすくし、安全に次の工程へつなぎ、近隣にも配慮しやすくするための土台です。
ここを理解すると、解体の仕事が「豪快に壊す仕事」ではなく、「順番に外して、分けて、次へ渡す仕事」だと見えてきます。
求人を見比べるときは、「内装解体」「分別」「アスベスト事前調査」「安全教育」といった言葉が書かれているかを先に見ると、手壊し解体を大切にしている会社か判断しやすくなります。
編集部が今回調査して意外だったのは、手壊し解体にも、重機解体にも丁寧な作業が想像以上に多いことでした。
もはや職人の域です。
解体の世界は奥が深く、面白さを感じています。
今後も興味深い解体の世界について皆さんにお伝えしていきます。